デジタル原稿の描き方

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はじめに

近年では、パソコンで漫画を制作することも一般化してきています。 手作業制作によるものをアナログ、パソコン制作によるものをデジタル、CG(コンピュータグラフィックス)などと言います。 作業の効率化、スピードアップ、効果的な演出など、デジタル化にするメリットは多くあります。 漫画賞でも、デジタル原稿の投稿を受け付けている出版社もあります。 ここでは、パソコンとソフトウェアを使ったデジタル漫画の基本的な描き方を解説します。価格は参考程度に記載。

ソフトウェアについてはこちら、 デジタル素材ついてはこちらを参照して下さい。

必要な道具

パソコン本体(OS)

  • Macintosh - 昔から画像関係のソフトに恵まれ、画像処理が得意なOSで、デザイン、印刷業界などでは主流です。反対にゲームなどのソフトはあまり多くありません。動作はWindowsに比べて安定していてウィルスが少ないのも特徴です。 インテル製CPU(インテルマック)搭載のMac OSX 10.5(Leopard)からはWindowsOSも起動可能で、Windows用ソフトも使用できるようになりました。 ハード本体はApple製のみですがデザインがクールです。(100,000円~)
  • Windows - 最も普及しているOSです。一般的な"パソコン"です。近年ではMacとほぼ同様のソフトが使用可能なため、印刷業界のシェアも少なくありません。 ハード本体は様々なメーカーが製造していて種類は豊富です。(100,000円~)

プリンタ

  • A4カラーインクジェットプリンタ - 個人向けの一般的なプリンタです。交換式インクを使用。スキャナやFAXなどとの複合機もあります。投稿用のB4原稿には向いていません。(20,000円~)
  • A3カラーインクジェットプリンタ - 業務用が多く一気に高価になります。B4原稿もOKですがインクジェット専用紙が必要です。(50,000円~)
  • A3モノクロレーザープリンタ - インクジェットプリンタより高速で高品質なものが多いです。交換式トナーを使用。モノクロ原稿の出力では一般的です。(100,000円~)
  • A3カラーレーザープリンタ - カラー機は高価でトナーも高価です。コピーやスキャナなどが付いた大型複合機の世界です。(200,000円~)

スキャナ

  • CCDA4スキャナ - 個人向けの一般的なスキャナ。ソフトなどの併用でA4サイズ以上のスキャナも可能です。(10,000円~)
  • CCDA3スキャナ - 投稿用の原稿はB4サイズなのでA3スキャナが望ましいですが、高価です。(100,000円~)
  • CISA4スキャナ - 個人向けの手軽な薄型タイプです。CIS方式はピントのズレやにじみがでる場合もあります。(10,000円~)

外部記憶装置

  • HDD - 外付けハードディスク。パソコン内蔵の記憶装置と同じ仕組みです。メディアを必要としません。大容量のもの、コンパクトで持ち運びに便利なものなど多彩です。260GB、500GB、1TBなど。(20,000円~)
  • MO - カートリッジ型の光磁気ディスク。CD-Rの普及までは主流でした。メディアは230MB、640MB、1.3GBなどがあります。(20,000円~)
  • CD-R・CD-RW - 一般的な光ディスク。メディアはそれぞれ650MB、700MBなど。CD-Rは削除不可で追加記録は可能(Macは追記できないものが多い)です。(10,000円~)
  • DVD-R・DVD-RW・DVD-RAM - 光ディスク。容量が大きく安価にもなってきました。片面4.7GB、片面2層記録では8.5GB、両面各1層記録で9.4GB。規格の種類が沢山あります。パソコン用とビデオ用もあります。(20,000円~)
  • Blu-ray Disc - 次世代光ディスク。1層25GB、2層50GB。(50,000円~)
  • USBメモリ - フラッシュメモリ。持ち運びに便利です。512MB、1GB、2GBなど。(1,000円~)
  • メモリーカード - フラッシュメモリ。携帯など様々な機器で使用できます。SDカード、メモリースティックなどがあります。512MB、1GB、2GBなど。(1,000円~)

タブレット

  • タブレット - ペン型マウスです。筆圧を表現できるのでペン入れからパソコンで行う場合便利です。サイズも色々あります。(10,000円~)

ソフトウェア

ソフトウェアについて詳しくはこちらを参照して下さい。

必要なスペック

パソコン本体の機能

  • CPU - 演算処理を行う部分です。数値が大きいほど動作が速いです。
  • GPU - グラフィックプロセッサ。画像処理を行う部分です。画像を扱う場合数値が大きい方が望ましいです。
  • メモリ - 一時的な記憶装置です。解像度の高い画像を扱う場合かなり数値が大きなもの(1G~)が望まれます。

周辺機器を接続するインターフェイスの種類

  • USB2.0 - 高速で接続できます。USBハブでひとつの端子から複数接続も可能ですがプリンタやスキャナを使う場合、端子が多い方が良いです。
  • USB1.1 - 古いパソコンにあります。接続速度は遅く、大きいデータのやり取りには不向きです。
  • IEEE1394 - USB2.0より高速。CPUの低いパソコンでもOK。FireWire、iLINKも同じです。
  • Ethernet - LAN規格。高速で、ネットワークの構築もできます。
  • eSATA - USB2.0より高速。

環境設定

解像度の設定

ソフトウェアで、はじめに画像解像度を設定します。 解像度は、ラスター画像(ビットマップ画像)における画素の密度を表わす単位(dpi)で、 高いほど滑らかに表示され、低いとギザギザ(ジャギー)になります。 印刷用のデジタル原稿の解像度は、300dpi以上、600dpi、1200dpiなどが望ましいです。

アンチエイリアスの設定



アンチエイリアス有アンチエイリアス無

ほとんどのソフトウェアは、画像を滑らかに表示させるため、画像の輪郭をぼかす「アンチエイリアシング」という機能があります。 しかし、解像度の高い画像には必要なく、逆に輪郭がぼけたような画像になってしまうので、アンチエイリアスは使用しない方が良いです。 ソフトのオプションなどで設定できます。各ツール毎に設定する必要がある場合があります。


色空間の設定

色空間をソフトウェアで設定します。モノクロ原稿の場合は、基本的には「モノクロ2階調」か「グレースケール」に設定します。 モノクロ2階調にすると白と黒に「2値化」されるのでアンチエイリアスも無効になります。 カラー漫画の場合は「CMYK」が望ましい(印刷機やプリンタがCMYKインクで印刷するため)ですが、 CMYKに設定できるソフトは限られているので、出来ない場合は「RGB」にします。

カラーマネージメントの設定

パソコン本体、ソフトウェア、プリンタ、スキャナなど、それぞれ、デバイスの色空間を定義した 「ICCプロファイル」が設定できるものがあり、これらは共通に設定する必要があります。 また、元々高解像度で作成した画像の場合、それぞれの「自動補正機能」などは使用しない方が良いです。

モニタの設定

パソコンの画面(モニタ)で見る絵と、印刷したときの絵をできるだけ近づけるため、モニタの設定をします。 色温度(K)、ガンマ値などを設定します。ソフトウェアで設定したりできます。 また、「マルチモニタ」を設定すればモニタを2台並べて2倍の画面にすることもできます。

WYSIWYGの実現

ディスプレイに表示されるものと印刷結果が一致するようにすることで、 「あなたが見るものはあなたが得るもの」という意味です。 昔のMacintoshは、周辺機器を含めて解像度が72dpiで統一されていたので、 完全なWYSIWYGが可能でしたが、現在は解像度のほか色空間、プロファイル、 ソフトウェアやデバイス独自の補正機能などが複雑に絡み合い、 WYSIWYGを実現することは不可能に近いですが、 表示通りの印刷結果を目指すことはデジタル環境における大きな課題となっています。

画像形式

画像形式の種類

  • PSD

    - Photoshopの基本フォーマットです。データは独自圧縮により軽めです。劣化もありません。
  • TIFF - 古くから使われる圧縮形式。比較的データが軽く劣化もありません。
  • EPS - 印刷業界で一般的に使用されます。Illustratorで扱えます。データは重いです。
  • PDF - AdobeReaderで表示するフォーマットです。データの交換やWEB向きです。
  • JPEG - 普及している形式ですが、圧縮で画質が劣化します。漫画データの保存には向きません。写真、WEB向きです。
  • GIF - 圧縮形式です。透過可能です。JPEGより画像に適していますがWEB向きです。
  • PNG - 非常に軽くて綺麗な形式ですがWEB向きです。

入稿

デジタル原稿が完成したら、MOなどに保存して入稿や投稿したり、 「出力センター」やプリンタで印刷を行います。 この時、相手に合わせてデータを調整する必要があります。 色空間やフォント、ソフトのバージョンなどを合わせて保存します。 ドローソフトの場合はフォントは「アウトライン化」をしたり、 トンボを付ける場合もあります。

Photoshopの使い方

スクリーントーン

Photoshopだけでもトーンを再現することが可能です。トーン化には様々な方法があり、また、プラグインなどもあります。

スクリーントーン(方法1)

プリンタ側でトーン化することが簡単確実な方法です。主にレーザープリンタで設定可能です。 グレーに塗った部分が、濃さに合わせて自動的に網点トーンになります。

スクリーントーン(方法2)

「モノクロ2階調」で「ハーフトーンスクリーン」線数を「30~60」、角度「45」、「円」に設定すると グレーに塗った部分が自動的に高品質な網点トーンになります。

スクリーントーン(方法3)

グレー部分を選択して「カラーハーフトーン」フィルタで「チャンネル」を全て「45」にして実行すると自動的に網点トーンができます。 これは「Photoshop Elements」でも可能ですが、「モノクロ2階調」に比べて品質は落ちます。

スクリーントーン(方法4)

設定により綺麗な網点トーンも作れます。まずトーン化したい部分をグレーに塗ります。そして自動選択ツールで オプションバーの設定を「選択範囲を1つだけ作る」、「許容値」を「1」、「隣接」のチェックをはずします。 その上で画像の黒の部分と白の部分をshiftキーで選択して「選択範囲を反転」します。 そして「コピー」をしてそのまま「ペースト」するとレイヤ化されて「選択範囲」が解除されます。 次にそのレーヤー画像に「カラーハーフトーン」フィルタ「最大半径」は「4~8」、 「チャンネル」は全て「45」をかけて、トーン化します。 この後、「画像を統合」して「モノクロ2階調」にして再び「グレースケール」に戻せば完成です。

スクリーントーン(方法5)

プラグインソフトがあります。

スクリーントーン(方法6)

パターンを利用してトーンを再現できます。自動トーン化ではありませんが、高品質で自由な柄にもできる確実な方法です。

  • パターンを作成、全て選択して「編集」、「パターンを定義」でオリジナルのパターンが登録できます。
  • ねこまたぎくらぶ トーンなどの高品質パターンのフリー配布。

スクリーントーン(方法7)

普通の市販トーンをスキャンしてコピペします。

スピード線と集中線

Photoshopだけでも描くことは可能です。ただ、プラグインソフトの方が仕上がりは綺麗です。

スピード線と集中線(方法1)

  • スピード線を描く
    スピード線1スピード線2
    1. 白地の新規ファイルを作ります
    2. 片端に縦一列にブラシで細かく点を打ちます
    3. モードを「モノクロ2階調」にして再び「グレースケール」に変換
    4. 点の列を縦一列に細く矩形選択ツールで選択
    5. 「イメージ」の「変形」→「自由変形」を選択
    6. もう片方の端まで列を拡大、確定
  • 集中線を描く
    集中線
    1. 「全て選択」して「回転」→「90度(半時計回り)」
    2. フィルタ「極座標」→「直交座標を極座標に」

スピード線と集中線(方法2)

プラグインソフトがあります。

スピード線と集中線(方法3)

アナログで描いたものをスキャンしてコピペします。

ぼかし


ぼかし
  1. 「フィルタ」の「ぼかし(放射状)」を選択
  2. 種類を「ズーム」にして「量」などを調節してOK

スキャナ

B4原稿をA4スキャナで読み取る場合は、半分に分けて読み込んで2つの画像を合成する必要があります。

スキャナ(方法1)

片方を切り抜いて描画モードを「乗算」にして貼りつけて画像を統合できます。

スキャナ(方法2)

「Photoshop Elements」では合成写真自動作成機能「Photomerge」を使って自動的に合成する事ができます。

ゴミ取り

スキャナで取り込んだ画像はまず、線画の抽出をゴミ取りを行います。これには様々な方法があります。

ゴミ取り(方法1)

「レベル補正」では画像の劣化を少なく、明るさの調節ができます。

ゴミ取り(方法2)

「明るさ、コントラストの調節」では明るさを上げてゴミの除去、コントラストを高くして線画を強調できます。

ゴミ取り(方法3)

「モノクロ2階調」で50%を基準にして、線画の抽出、アンチエイリアスの除去ができます。

ゴミ取り(方法4)

「消しゴム」ツールでは手動でゴミを取り除きます。「階調の反転」をするとゴミが浮き出るので見つけやすいです。

ゴミ取り(方法5)

自動でゴミ取りを行うプラグインもあります。

描線を繋ぐ

ブラシツールのポインタで一方の線をクリックして、 もう一方の線にポインタを移し、shiftキーを押しながらクリックをすると自動的に線が繋がります。

白フチ

白フチを付けたい部分を選択範囲にして「境界線」ボックスを開いて「幅」を適当に調節、 「カラー」を白に指定して、「位置」を外側にすれば完成です。

2階調化

白黒2色だけにする方法です。上記スクリーントーンの方法でも2階調化を応用しています。合わせて参考にして下さい。

2階調化(方法1)

2階調化するレーヤーを選択して「イメージ」→「色調補正」→「2階調化」します。 「しきい値」を設定して白と黒に分けます。トーン化はできません。

2階調化(方法2)

「イメージ」→「モード」→「モノクロ2階調」します。 全てのレイヤーに適応されグレーで編集できなくなります。 このとき「ハーフトーンスクリーン」にするとグレー部分がトーン化されます。

2階調化(方法3)

プラグインソフトがあります。

  • monotone フリープラグイン。選択範囲だけも可能。

透明化

  • Eliminate White Filter 「PhotoshopElements」で白い部分を透明にするフリーのフィルター。

Illustratorの使い方

線画をパスに変換する



サンプル画像サンプル画像2

Illustratorでは、画像をベクターデータで扱うため、拡大や縮小による画像の劣化がありません。 漫画のようなモノクロの線画などはベクターデータに適しています。 スキャナで取り込んだ画像(ラスターデータ)はいくつかの方法でベクターデータに変換することができます。


線画をパスに変換する(方法1)

  1. Photoshopで上記の「ゴミ取り」をします
  2. 自動選択ツールで「隣接」のチェックをはずし、黒い部分を選択
  3. 「パス」ウィンドウを選択し、「選択範囲からパスを作成」を選択
  4. さらにウィンドウ右上の矢印から「グリリッピングマスクを作成」を選択
  5. コピーしてIllustratorに貼り付け

線画をパスに変換する(方法2)

  1. Photoshopで上記の「ゴミ取り」をします
  2. ヘルプから「透明画像の書き出し」を選択
  3. ナビにしたがって「EPS」形式で保存
  4. Illustratorで保存したファイルを開きます
  5. 配置された画像だけを消去するとパスが残ります

線画をパスに変換する(方法3)

Illustrator CS2からは「ライブトレース」機能があり、自動で簡単に変換できます。

線画をパスに変換する(方法4)

「Adobe Streamline」というソフトで自動変換できます。

スクリーントーン



トーン

「スウォッチ」で作成できます。Illustratorのプログラムがあるフォルダの中の、 プリセットフォルダのパターンの中にある、点やグラデーションのサンプルから選択します。 また、「パターン」を登録することでオリジナルのトーンも作成することができます。


WEB公開について

PDF

デジタル漫画をWEB公開する場合、画像をPDF形式で出力する方法があります。 PDFは簡単で、画質が良く、容量も小さく、フォントを拡大しても綺麗に扱え、さらに見開きにも対応できます。

ComicStudio Mangaビューア

ComicStudioで作成した漫画は専用のビューアで出力、公開できます。 Flash playerで直感的に閲覧できます。

JavaScript

JavaScriptのライブラリを利用して、簡単に画像スライドショーできるものがあります。

サンプル→サンプル

WEBサイトについて

ホームページの作り方についてはこちらも参照して下さい。

関連リンク


出典:Wikipedia GNU Free Documentation License
参考文献:天才パソコミ塾(集英社)

更新:2015年5月 6日